能の用語解説

「能の独特の表現」でもとりあげていますが、ここではこのことに関わるその他のことも交えて解説します。

今回のテーマ~《「シオリ~感情表現」

▽「能面のような顔」というと、喜怒哀楽を表さない、ちょっと人間離れしたような表情のことですが、実は、「能面」というのは、たいへんに“表情”を持っています。


▽なかなか、一素人が、能面を手に取ってながめる機会などはないのですが、舞台上でシテがかけている面が、舞台(照明)の位置や、シテが顔の向きを変えることによって、その演じる人物の感情を見事に表現しているのです。


▽といっても、顔の角度を変える“演出”には、「照ラス」と「クモラス」の二つしかありません。

「照ラス」は、面を少し上に仰向きにすること。喜びを表現します。
「クモラス」は、面を伏せて、物思いに沈んだり、悲嘆に暮れることを表現します。

▽あとは、面の眉のあたりに、指をそろえた手を近づけてゆく「シオリ」です。泣くことの表現です。この時、男は右手、女は左手を使うのが原則です。

▽NHKテレビの能楽の舞台中継を見ていて、いつもがっかりするのは、固定され、角度の決まったたカメラで、シテの面が「アップ」になることです。演者の感情表現は、「身体全体」で表現されるので、「顔」だけをじーっと映されても、何のおもしろみも感じられませんよね。