能曲目解説

主なあらすじ
房前(ふさざき)の大臣は、亡母を追善しようと、讃岐の国志度(しど)の浦を訪れます。志度の浦で大臣一行は、ひとりの女の海人に出会いました。
海人は従者から水底に映る月がよく見えるよう海に入って海松布(みるめ)を刈るよう頼まれ、そこから思い出したように、かつてこの浦であった出来事を語り始めます。

昔、淡海公(藤原不比等)の妹が唐土の高宗皇帝の后となったため、藤原氏の氏寺である興福寺へ三つの宝が贈られることになった。
※三つの宝
一度打つと袈裟をかけるまで妙音が止まぬ楽器「花原磬(かげんけい)」、墨をすれば自然に水がしみ出す硯「泗浜石(しびんせき)」、どの方角からも玉の中の釈迦像が正に見える「面向不背(めんこうふはい)の玉」。ところがこのうち、花原磬と泗浜石は無事に都に届いたものの、面向不背の玉だけは房前のの浦で龍神に奪われてしまった。
それを取り返すために淡海公が身分を隠してこの浦に住んだこと、地元の海女と契りを結んで一子をもうけたこと。そして子を淡海公の世継ぎにするため、自らの命を投げ打って玉を取り返したこと・・・・その時の子が今の大臣、房前公である・・・・・・

その話を聞いていた大臣は、自分こそその房前の大臣であると名乗り、玉を取り返した時の母の様子を再現してくれるよう海女に頼む。

すると海女は恐縮しながらも、大臣の願いを聞き入れるのだった。千尋の縄を腰につけ、一本の剣を持って海に飛び込んだ時のこと。八竜や鰐の警護が厳しい竜宮のこと。そこへ覚悟を決めて飛び入り、宝珠を奪ったこと。さらに追っ手を逃れるため、自ら乳房の下を切り、宝珠を埋めたこと……。

そして最後に、その海女は自分が”その時の”海女、つまり房前公の母の亡霊であると正体を明かし、手紙を置いて海中に消えてしまう。

海女の手紙には次のように書かれていた。
「すでに死んで十三年の年月が経つが、自分を弔ってくれる人はいない。もしあなたに孝養の気持ちがあれば、供養して自分をこの闇から救って欲しい」冥界で助けを求める母の願いを知り、志度寺にて十三回忌の追善供養を執り行います。法華経を読誦しているうちに龍女(りゅうにょ)の姿となった母が現れ、さわやかに舞い、仏法の利益によって成仏できた喜びを表します。

詳しい解説は、ここをクリックして下さい

鑑賞ポイント解説

❑「海士」

▽登場人物 

前シテ:前シテ:海人  

ワキ 従者       ワキツレ 従者  
子方 房前大臣(藤原不比等「淡海公」の子) 
 
❁アイ  所の者

後シテ:龍女 

▽面  ○前シテ 近江女         後シテ 橋姫(怨霊面)

▽曲柄  初(小書三段の舞の場合)・五番目物

▽形式  複式夢幻能
▽主な場面
海士謡はこちらへ
龍女