能曲目解説

▽雑感
世阿弥の娘婿・金春善竹の作です。彼の祖先は聖徳太子の家臣・秦河勝であった。秦氏と加茂氏は加茂川・淀川を拠点とした渡来系の豪族で「治水」に長けていたという。この作品はそのような背景を意識して作ったのかもしれない?・・・・
謡のなかで「秦の氏女」と言っているが、「秦氏の女」だったのではないか???

後シテ登場。・・別雷神→雷神(雨の神)は農耕を守る神。
突き立てられた「矢」が「父親」を表している。
▽見どころ

❑賀茂

主なあらすじ

播州の「室の明神」の神職 が、同じく明神をまつる京の都の上賀茂神社を訪れる。見ると、二人の里女が川で水を汲んでいる。そばには、白羽の矢が真新しい壇に立てかけてある。

神職がその矢のいわれを尋ねると、「昔、秦の氏女という人がいて、朝夕水を汲んでは神に供えていたが、ある日、川上から矢が1本流れてきたのを拾って、家の軒に挿したら、懐妊して男の子を産んだ。そして男の子が三歳になった時、人々が集まって「お前の父は一体誰なのか」と問うと、男の子がその矢を指し示すと、矢は雷鳴となって天上に昇って神となり、この男の子と母親も神となった。これがすなわち賀茂三所(上賀茂神社、下賀茂神社、松尾神社)の起こりであるというのだ、と説明されます。

里女から賀茂神社の縁起を聞いて、神官はありがたい気持ちになる。が、その一方で疑問もわく。賀茂神社の御神体(別雷の神)の父である矢と、今川辺にある矢とは別物であるのに、どうしてそれを御神体(御神物)として祀るのか・・・。
里女は「一本の川にも場所ごとに名前があり、上流では賀茂川、下流では白川、また同じ賀茂川でも、石川、三瀬の小川などという言い方をするが、もとをたどれば一本の川。しかも、その水は常に移り変わっているものだ。矢についても同じ道理である。
時の移り変わりとともに矢そのものも新しくはなるが、人々の信仰の対象という点では一本の川と同じであり、その御威光は川の流れのごとく生き続けていくのだ、と。
余りの深遠な回答に舌を巻いた神官は、里女に正体を問う。すると里女は「帝をお守りする意思を伝えに現れ出た”高貴な神”である」と答え、人前に現れて身分を明かしたことを恥じながら、社の中へと消えるのだった。
後半は、天女姿の“御祖神〔下鴨神社〕”が賀茂川の流れに袖を浸すと、山河草木がにわかに震動し始め、別雷の神も出現する。
“別雷神(上賀茂神社)”が五穀豊穣、国土安泰の誓いを表わす中、御祖の神は社に入り、その姿を見送った別雷神は虚空へと飛んで行きます。

▽登場人物  

シテ:前―里女(御祖の神) (面:増)    後―別雷神〔わけいかづちのかみ〕(面:大飛出)

ツレ:前―里女(没個性) (面:連面)  後―御祖の神〔みおやのかみ〕 (面:連面)

ワキ:室明神の神職
※連面:名称の通り、女ツレのみに使用する小面。
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▽主な場面

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鑑賞ポイント解説